vol.1サービスグラントTOKYO 嵯峨生馬氏 (2/3)


「雑誌から出たリアル!そしてそこで現れた、数々の気づき。」


VOICE

一朝一夕で日本に適応出来るものではないな。

そういった、危機意識をもち帰国してから、どういった行動に出たんですか。


嵯峨

すぐに行動に出るというようなことはなかったんですよ。

というのも、社内で「サービスグラントは新しい企業の社会貢献スタイルです!」
と提案し、プロジェクト化させようと思っていたんですよね。

けど、そのプロジェクトは理解があまりえられなくて、、。笑 

そんな折に、ソトコトで連載記事を書くことになったんですよね。

そこにサービスグラントに関する記事を半年間連載させて頂きました。

この書く過程が良かった。

サービスグラントに対する理解が整理されたのはもちろんなんですが、
編集者と「サービスグラントはいいねえ!」と、すごい盛り上がったんですよ。

その編集者の奥さんも

地域通貨はよく分からなかったけど、サービスグラントは良いと思う。」
なんていわれちゃって。笑 

そうこうしてるうちに、ソトコトが以前に丸ビルで運営していた「ロハス&キッチンバー」で、
お店を活用してNPOをテーマにしたイベントってありませんかね?と相談されたんですよ。

トークライブとか色々考えたんですけど、せっかく連載もしていたんだから、
サービスグラントでやっちゃいますかと。笑 

すごい軽いノリなんですけどね。

それで、サービスグラントの説明会を12月にやることになったんです。


VOICE

最初の説明会はどれくらい集ったんでしょうか?


嵯峨

それがけっこう集まっちゃった!

立ち見も出る盛況で、30、40人くらいになりました。

これはいけるかもと思いましたね。

説明会が終わってから、スキル登録をお願いしたら、みんな熱い事を書いてくれて。

結局、初日だけで20人くらい登録者になりました。

そこで、まずは6人1チームで3団体に対してサービスグラントをはじめてみることになったんですよね。


VOICE

それが、サービスグラントTOKYOの起源なんですね!

3つのプロジェクトはどういった支援内容になったんでしょうか?


嵯峨

3つともHP作成でした。今でもwebが多いですからね。

初めは本当馴れなかったから、カフェで月に1度集って、3つ合同で進めていたんですよね。

期間は6ヶ月を目安にしましたが、延びてしまうことはもありました。



VOICE

実際に始動しはじめたわけですが、どういった発見がありましたか?


嵯峨

サービスグラントの優れているところは、すでにチームが出来ているところなんです。

個人でボランティアをやっていると、なかなか継続しなかったり、一人だけに負担がかかってしまって、
続けられないという状況が生まれてしまうんですね。

よっぽどモラルが高くて、根性がある人じゃないと続けられない。

けれど、チームだと、お互いプロフェッショナルですから、良い緊張関係が生まれるんですよね。

1つの荷物をちょっとずつシェアするので、負荷が小さくなりますよね。そうすると、軽々とまわっていきます。

そういった安心感があるので、チームも最初から打ち解けていきますね。

ただ、良くなかったのは、本業が忙し過ぎて、すぐにチームから抜けてしまった人も発生したことですね。。


VOICE

それは、作業の割り振りがうまくいかなったということですか?


嵯峨

実は、3つのプロジェクトで成果がでたのは2つで、1つは失敗してしまったんですよ。

その理由は、途中でメンバーが仕事が忙しくて抜けてしまったこともあるんですが、
新しく中心になった人が自分の裁量でプロジェクトを大きくしすぎっちゃったんです。

つまり、離陸はしたけど着陸できなかった。

最初に、僕がWebサイトの実現可能な目安として20ページくらい作成すると決めていたのに、
あれもこれもと、どんどん増えていった。

そうしたら要求水準が上がり、落し込みが出来ないボリュームになってしまったんです。

また、デザイナーがロゴに気をとられてしまったというのもあります。

Webサイトを完成することが目的だったんですが、タイトルデザインをする過程で
ロゴを変更することに意識が向いてしまったんですよね。

今更いうと恥ずかしいんですが、タイトルイメージとロゴは全く違います。

ロゴは組織全体をあらわしますからね。

本来の目的以外の課題に目がいってしまい、プロジェクトから脱線し、全体として着陸ができなかったんです。

ここで、僕がすごく学んだことは、ボランティアの仕事はふくらみすぎるとダメだということ。

ボランティアというのは半分無責任な存在なんです。

自分で扱えない範囲まで手を広げてしまうボランティアほど危険な存在はないです。

境界線を超えないように、線を明確にしないといけない。

そこの仕分けをきちんと行ってプログラムをつくらないと、
無駄な負荷がボランティアにかかってしまいます。

これは、プロボラを活用していくうえで非常に大事なところだと思います。


VOICE

それを、最初のプロジェクトで経験出来たのは、良かったですよね。

この他にも失敗といえることはあったんですか?


嵯峨

細かい事なら本当に沢山ありますよ。

賑やかなお店で会議をしないとかね。笑 

2、3人でやる分にはいいんですよ。けど、5、6人じゃストレスが溜まりますよね。

ちゃんとお金をかけて、ホワイトボード等がある場所でやったほうがいいですからね。

MTGはサービスグラント全体で顔合わせせる数少ない時ですからね、ちゃんとやらないとね。



「善意と善意がぶつかり合う!-それを解消するマーケティング視点-」


VOICE

ボランティアに負荷を与えすぎないために、しっかりとタスクの仕分けと線引きを行う。

これを行うグラントマネージャーとプログラムオフィサーは大事な役目ですね。


嵯峨

そうですね。

プログラムオフィサーは、これまでは大体僕がやってきましたが、いかに参加者が楽しんで取り組めるか、
無駄な労力をつかわずに取り組めるかを考えています。

僕は、時間や発想と同じように、善意も有限な資源だと思ってるんです。

やっぱり、どっかで使いすぎると、どっかにシワ寄せがいってしまうという感覚があります。

善意を早めにだしきってしまわなように常に気をつけてます。


CFJ

なめらかにプロジェクトが進むようにするということですね。

最初にエンジンをかけすぎると、途中でガス欠してしまうと。笑


嵯峨

いやほんとうにそうですよ。

だから、初めにあまり盛り上がらないようにする。笑 

なめらかに進めるために、サービスグラントは初めに成果を設定して、
週5時間を目安に活動しているんです。

僕は、最初にみんなで集まって、「それじゃあこれから何をやろうかと?」
というタイプのボランティアは無理があると思っています。

「何をやるか」に頭を使ってしまうと、実際にそれを落し込む段階で苦労する。

もちろん、「何をやるか」を決める、ワークショップのプロボラもいると思いますけど。

僕は基本的に、実際に落し込みをやる人に「何をやるか」を考えさせるのは、間違った使い方だと思います。


CFJ

まず、落し込みに集中してもらうと。

何をやるかはNPO側、ないしはプログラムオフィサーが予めヒアリングを通じて決めておく。


嵯峨

そうですね。

やはり、「何をやるか」を決めるというのはプロボラから外れると思うんですよね。

サービスグラントで来る方はNPOのプロフェッショナルではないんですよ。

コミュニケーションや情報発信のプロであって、NPO運営のプロではない。

だから、このNPOに何が必要っていう議論はややもすると素人の議論に陥りかねないのです。

僕もNPOをやらせてもらってますが、変な人にコンサルとかうけたくない。笑 

問題はわかってるけど、どう広げればいいか、広げるための落し込みが出来ないから困ってるのに、
ペーパーとかつくってるなら、営業とかやってくれと思ってしまう。

僕は、プロボラには実際にスキルを発揮してほしいんですよ。


CFJ

そこはすごく大切ですね。

NPO本来の目的を考えると、「何をやるのか」を考えがちになってしまいます。

けれど、まずは目の前の課題から入ってみる。


嵯峨

僕も日本総研でコンサルだったんです。

やはり、コンサルはどんだけ頑張っても自分がやるってことはないんですね。

委託者がいて、受託者がいる。

コンサルはあくまで委託者に対するコンサルなんです。

実際に何かをやるのは委託者なわけです。

そうすると、委託者に体力がないとダメでしょ。NPOは体力ないんですよ。

イデアは、10も100もたくさんあるけど、実行が出来ない。

人もいなければ、お金もない。

だから、NPOのニーズとしては、実行、落し込みをしてほしい。


CFJ

単純にプロボラが増えるだけではダメだと。


嵯峨

やはり、コーディネート力やマネジメントをするのは大事です。

ボランティアだからこそ効率的にやらないとダメだと思うんです。

ボランティアはイヤになったら逃げられますからね。本業は逃げにくいけどさ。


CFJ

外部の人が、ちょろっとNPOに来て、何か意見を言ったりすると、
既存スタッフのプライドが傷つくなど、人間関係が悪くなることはあるんでしょうか?


嵯峨

ああ、それは場合によってはあると思いますよね。

文脈にもよると思うのですが、その「意見」がどれだけNPOの側にとって
役立つものかによると思うのです。

往々にして、外部の人が思いつきで言う意見の中には、

NPO側ではもう数年以上課題になり続けていて解決策が見つからないでいるようなことを指摘して、
いい気分になっている、という人もいるような気がします。

それは、解決できない理由があるので、指摘したり意見を言ったりしても何の解決にもならないんですね。

そういう中途半端な外部の人達に、

「ここがたりない」とか言われるとやっぱムカつくかもしれないし、
人間関係が悪くなるということもあるかもしれないよね。笑 

やはり、NPOがここまで来ているのも、今やっていることも、それなりの理由がある訳であってね。

そこでいきなり「全然広がってない」とか、「もっとこうしたらいい」とか言われてもね。

もちろん、NPO側も注意する必要があります。

プロボラはもちろん熱意も技術もあるんです。

そういう人の扱いは注意しないといけない。

そういう人を無下には扱わず、大事に扱ってほしい。

善意と善意が出会った時に起きる不幸があるんですよね。

僕は、それが起きないためにも、マーケティングの視点が非常に大切だと考えています。

マーケティングはつくる人の立場でない視点が必要なんですよ。

マーケティングはあくまでも、うける側の視点にたってコミュニケーションをデザインしていくんです。

NPOもプロボラもつくる側・提供する側に立ってしまうと、いつまでも折り合わない。

お互いが受ける側を向いていれば、足並みを揃えられるんですよ。

だから、サービスグラントのなかでもマーケティングフェーズは重要で、
そこが一番最初にきます。

マーケティングって、なかなか深い言葉で、結構難しいんですよね。

僕もようやく、こういうことなのかなって分かってきたくらいで。

やっぱり、マーケティングは宣伝とか販促とか値付けじゃなくて、
受け手の側の反応や知識レベルが大事ってことなんです。

タップルートファウンデーションからもらったツールがあるんですけどね、
ターゲット設定、ターゲットにどういうメッセージを伝えるかに至るまでの質問があるんです。

その中で鍵となるのが、ターゲットがイシュー(課題)に対してどういう知識レベルをもっているか、
そしてどういう言葉で共感を得られるかというものです。

つまり、ターゲットがわかる言葉で説明していかなくていけないんですよ。


CFJ

上から縄をおろして登ってこい!と言うのではなく、
相手のステップを把握し、階段をつくるという事ですね。


嵯峨

そうそう。

まず、ターゲットに伝わる言葉を発見するためには、
ターゲットに対するヒアリングを行う事が大切です。

ターゲットが、何にどのくらい関心を抱いているのか、
どの言葉に反応するかを、チームで共通認識をもっていく。

コミュニケーションを成立させるうえで大事なことは共感です。

だとすると、HPでいきなり団体概要やミッションから掲載しても、
ターゲットには響かないんですよ。

ですから、サービスグラントでは、まず、NPOの方とお会いした時は、

「僕たちはどういう人にヒアリングをしたらいいですか?」と質問するんです。

NPO側もターゲットの考えやニーズを分かってない事が多いんです。

下手をすると、なぜボランティアが事務所に来ているのかについても分かっていない。